エッセイ · 現代アート

Rael San Fratello「Teeter Totter Wall」。

Rael San Fratello. Teeter Totter Wall.

一方の端が下がると、もう一方が上がる。

Rael San Fratello「Teeter Totter Wall」:国境の壁を通り抜けるシーソーを描いたエッチング


壁への提案

ロナルド・ラエル(Ronald Rael)とヴァージニア・サン・フラテッロ(Virginia San Fratello)は、Rael San Fratello として共に活動する建築家である。2000年代初頭から、ふたりはアメリカとメキシコの国境の壁への提案を描きはじめた。壁をさらに築くためではない。壊すためでもない。問うためである。この壁は、ほかに何に使えるのか。

ふたりは実際の話をもとにした。両側で、人々は壁を別の何かに変える方法を見つけつづけていた。しばしば驚くようなやり方で。Rael San Fratello はそれを記録し、描きつづけた。

提案のリストは長い。遊び心のあるもの。鉄の柱に取り付けた木琴、バレーボールのネット。インフラとしてのもの。浄水、太陽光パネル。地域のためのもの。図書館、出産センター。自然のためのもの。サボテンの列、野生動物の通り道。

2017年、これらの構想の多くは、ロナルド・ラエルの著書Borderwall as Architectureにまとめられた。

エッチング、そして3台のシーソー

シーソーの構想は2009年ごろにスケッチされた。2014年にはエッチングになった。壁の隙間に差し込まれた板、その両端がそれぞれの国にある。61 × 76.2 cm のこの版画は、現在ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art)に収蔵されている。

何年ものあいだ、それは素描のままだった。やがて、アメリカの国境政策が緊迫した主題となる。壁の延長計画、移民家族の引き離し。Rael San Fratello は、提案のひとつを紙の上から取り出すことにした。

2019年7月28日、シウダー・フアレスの Colectivo Chopeke とともに、ふたりは3台のピンクのシーソーを鉄の柵板のあいだに通して設置した。北はニューメキシコ州サンランド・パーク。南はシウダー・フアレスのアナプラ地区。両側にひとつずつのチームが、板を所定の位置へ押し込んだ。

それから、両側の子どもと大人が腰を下ろした。1時間もたたないうちに、シーソーは撤去された。

支点

シーソーは、誰にでもわかるほど単純なイメージである。Rael San Fratello がそれを選んだのには理由がある。シーソーは支点によって働く。ラエルが説明したように、壁はふたつの国の関係におけるその支点である。一方の端で起きることは、もう一方に直接響く。

それは隠喩であり、物理的な事実でもある。メキシコ側の人は、アメリカ側の人が下がらなければ上がれない。どちらも相手を考えに入れなければならない。

ピンクもまた選択だった。錆色の鉄と乾いた地面のなかで、3枚のピンクの板は際立っていた。軽く、はっきりと。国境の構造物に属するどんなものとも違って。

なぜ作品は残るのか

「Teeter Totter Wall」はどの政策も変えなかった。壁を取り払いもしなかった。存在したのは1時間に満たない。けれど、その午後の映像と写真は遠くまで伝わった。

2021年1月、ロンドンのデザイン・ミュージアム(Design Museum)は、このプロジェクトを Beazley Design of the Year 2020 に選んだ。建築、グラフィック、プロダクト、ファッションといった部門の候補を抑えて。

作品を残らせているのは、その尺度である。とても大きな問題に、とても小さなおもちゃで応える。マニフェストはない。横断幕もない。あるのは一枚の板と、ひとつの支点と、均衡を保つために互いを見ていなければならない両端のふたりだけ。

ロナルド・ラエル、ヴァージニア・サン・フラテッロ(Rael San Fratello)「Teeter-Totter」