エッセイ · 写真

ゾーイ・レナード。「Analogue」。

Zoe Leonard. Analogue.

店は閉まる。写真は残る。

ゾーイ・レナード「Analogue」:ニューヨークの小さな店先を写した正方形の写真


自分の通りから

1990年代の終わり、ゾーイ・レナードは自分の住む界隈、マンハッタンのロウアー・イースト・サイドを撮りはじめた。店先、看板、ショーウィンドウ、歩道の小さな細部。食料品店、古着屋、写真店。

どれも家族経営の店で、一人の店主と、その店なりの並べ方があった。そして、消えつつあった。家賃が上がった。界隈が作り替えられた。チェーン店が角をひとつ、またひとつと取っていった。レナードは、閉店がすでに見えていたころ、まだ開いているうちにそれらを撮った。

プロジェクトは1998年から2009年まで続いた。10年以上、彼女はその通りへ戻り続けた。店がまだあることもあれば、看板が外されていることもあった。

古い物のための古いカメラ

レナードは1940年代のローライフレックスを使った。機械の時代の残り物、と彼女自身が呼んだ道具。これは些細な技術的な注記ではない。取り残されていく店が、それ自体取り残されていくカメラで記録された。

ローライフレックスは正方形の画面を生む。プリントは二つの方法で作られた。白黒はゼラチン・シルバー・プリント、カラーはクロモジェニック・プリント。どれも約28×28センチ。光沢も修整もない。記録のように見え、実際に記録である。

写っているのはありふれたものだ。色褪せた看板。手書きの値札。マネキン。狭く、ものの詰まった小さな店の内側。そのありふれたものこそが失われつつあった。一軒一軒の店の個性、小さな経済の多様さ、ひとつの通りの歴史。

ベールを追って

レナードはさらに先へ進んだ。古着、捨てられた広告、衰えゆく技術であるコダックの写真店。中古の物がたどる道を追った。それは彼女を、アフリカ、東欧、キューバ、メキシコ、中東の市場へ導いた。

繰り返し現れる像のひとつが、きつく縛られ、ある場所から別の場所へ運ばれる古着のベール(梱)。ニューヨークに現れ、再びウガンダのカンパラで、古着輸入業者の手描きの看板に現れる。そしてカンパラの市場では、古着のシャツが日差しを避けて丁寧に吊るされ、ショーウィンドウのように並べられている。

だから「Analogue」は、ひとつの界隈だけの話ではない。ひとつの網の目を描いている。ある場所で捨てられたものが、別の場所で商品になる。グローバル化が、ごく具体的な物を通して姿を現す。

412枚の写真、25の章

「Analogue」の全体は、25の章からなる412枚の写真で、グリッド状に、あるいは長い連なりとして掛けられる。2007年、ウェクスナー芸術センターとドクメンタ12で初公開された。以後、別の形でも存在してきた。40枚のダイトランスファー・プリントのセット、一冊の本、部屋全体のインスタレーション。ニューヨーク近代美術館も展示している。

壁全体の前に立つと、見る人は一軒一軒の店を見なくなる。見えるのは反復だ。この店、あの店、この街、あの街、同じ種類の閉店。変化の規模は、写真が並んだときにはじめて現れる。

「Analogue」は記録であり、静かな哀歌でもある。薄れゆく日常を記録し、それを薄れさせる仕組みを問う。ゆっくり見ることを求める。何が生き残り、何が置き換えられたのか。像を通して記憶するとはどういうことか。

ゾーイ・レナード「Analogue」(1998〜2009)