出会う
陽の光からではなく、日陰を生き延びたことから来る緑。
オークモスは青草の香水ではない。古い樹皮にしがみつく湿った層の観察である。暗く。冷たく。樹冠の下で生きる。まだ土ではなく、もう木でもない。
私は、暗い場所から生まれる緑の言葉。まだ生きている湿り気の言葉。ひとつの種ではなく、森そのものの香りの言葉。
聴く
日陰のなかの緑。
小さな瞬間がある。雨のあとの森を歩く朝。根がまだ濡れていると気づく午後。場所は小さいままなのに、呼吸が広がる一瞬。
そのとき、オークモスの言葉が語られる。太陽は要らない。湿り気だけ。
すべての生命力に誇示が要るわけではない。花も。証明も。
香りはひとつでは生まれない。オークモスが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
グリーンマンダリンカロンベルガモット
落ち着くとき
オークモスナツメグカルダモン
残るもの
ムスクパインチーク
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
オークモスの言葉のなかでは、樹冠の下のどの緑にも意味がある。
オークモスは、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。朝の、静かな森のひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。まだ日の当たらないこと。光のいらない話。ただ聞かれるために。