出会う
まだ名づけられていない場所からの引力。
烏龍茶は濃いお茶の香水ではない。ふたつの状態のあいだにとどまる一枚の葉への観察である。半ば酸化。緑と黒のあいだ。みずみずしさと深みのあいだ。あいだの香り。
私は、どこからともなく来る引力の言葉。まだ移ろい続ける香りの言葉。途中で止まることを知る葉の言葉。
聴く
まだ終わっていないから、愛おしい。
小さな瞬間がある。まだ色の変わり続ける一杯を淹れる朝。ふたつの気分のあいだにいる誰かに気づく午後。引力とは、まだ静まっていない何かだと知る一瞬。
そのとき、烏龍茶の言葉が語られる。明晰さからではない。まだ残る霞から。
すべての引力に決断が要るわけではない。結論も。選択も。
香りはひとつでは生まれない。烏龍茶が声を見つけるために借りた断片。
開くとき
ハニーサックルスイートピーベルガモット
落ち着くとき
茶葉ユーカリクラリーセージ
残るもの
トンカビーンベンゾインムスク
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
烏龍茶の言葉のなかでは、どのあいだにも意味がある。
烏龍茶は持ち帰る香りになりうる。机の上の小さな片隅。午後のための移ろうひと重ね。
あるいは分かち返す片隅に。まだ動き続けているもの。結末を必要としない物語。ただ聴かれるためだけに。