出会う
酔いからではなく、十分に待ったことから来る恍惚。
ウィスキーは鋭いアルコールの香水ではない。オークのなかで十分に待った液体の観察である。木に刻まれた時間の香り。焦げて。甘く。深く。
私は、忍耐で得た高揚の言葉。誰にも急かせない風味の言葉。仕事を果たした木の言葉。
聴く
ゆっくりと届く恍惚。
小さな瞬間がある。グラスを掲げ、内側からあたたまる夕べ。ゆっくりした喜びもまた喜びだと気づく午後。そばに誰もいない至福の一瞬。
そのとき、ウィスキーの言葉が語られる。これ以上は要らない。待つだけ。
すべての恍惚が急がれるわけではない。濃い量でもない。頂点でもない。
香りはひとつでは生まれない。ウィスキーが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
サフランジャスミンペッパー
落ち着くとき
栗グアヤックウッドパチョリ
残るもの
ウィスキーシダーウッドバニラ
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
ウィスキーの言葉のなかでは、ゆっくりしたどの樽にも意味がある。
ウィスキーは、家に持ち帰る香りにもなる。机の上の小さな一角。夕べのための、焦がした木のひと重ね。
あるいは、分かち合うための一角。まだ熟成していないこと。まっすぐな筋道のいらない話。ただ聞かれるために。