出会う
奇妙さからではなく、近さから来る魅惑。
ホワイトムスクは重いムスクの香水ではない。形のない香りへの観察である。肌の香り。まだ名づけられていないものの香り。距離を必要とせず、体の近くにとどまる香り。
私は、魅了する近さの言葉。見せびらかさない香りの言葉。なじむまで十分に長く並んでいたものたちの言葉。
聴く
近くで、魅惑。
小さな瞬間がある。言葉の要らない誰かの隣に座る朝。ある香りを覚えてしまったと気づく午後。なじんだものから来る魅惑の一瞬。
そのとき、ホワイトムスクの言葉が語られる。距離はない。ちょうどいい近さだけ。
すべての魅惑に奇妙さが要るわけではない。贅沢も。劇的さも。
香りはひとつでは生まれない。ホワイトムスクが声を見つけるために借りた断片。
開くとき
ホワイトムスクイランイランバジル
落ち着くとき
リリーアイリスローズ
残るもの
アンバーバニラベチバー
こだま
持ち帰る香り。分かち返す片隅。
ホワイトムスクの言葉のなかでは、どの近さにも意味がある。
ホワイトムスクは持ち帰る香りになりうる。机の上の小さな片隅。ふだんの一日のための、肌に近いひと重ね。
あるいは分かち返す片隅に。まだ名づけられていないもの。奇妙さを必要としない物語。ただ聴かれるためだけに。